この記事では、Pythonの継承の使い方を解説します。
クラスを継承することでそのクラスの属性を引継ぎ、拡張・変更したサブクラスを定義することができます。 もちろん組み込み型のクラスを継承することもできます。
クラスの使い方については以下の記事を参照してください。
それでは、Pythonの継承の使い方を見ていきましょう!
継承とは?
継承(Inheritance)とは、クラスから派生した子クラスを定義することです。 子クラスを定義することで親クラスの属性を引き継ぎ、さらに拡張することができます。
また、継承を行うことで派生クラスに親クラスの属性が定義されていることを保証できます。
継承元のクラスを「基底クラス・親クラス・スーパークラス」と呼び、継承先のクラスを「派生クラス・子クラス・サブクラス」と呼びます。
それでは、実際に継承を行う方法を見ていきましょう!
継承の使い方
継承を行うにはクラス定義時の名前の後に()
を使って継承させるクラスを指定します。下記の場合、Aが子クラス、Bが親クラスとなります。
class A(B):
# なんらかの処理
さらに、1つのクラスに複数のクラスを継承させることもできます。
class A(B, C, ... ,N):
# なんらかの処理
複数のクラスを継承することを「多重継承」と言いますが、菱形継承問題などもあり、構造が複雑化してしまうのであまり使われません。
例として、適当なクラスから派生クラスを定義し、継承を行ってみます。以下のコードでは、Animal
クラスから2つの派生クラスを定義しています :
class Animal:
def __init__(self, name):
print('Animalクラスのコンストラクタが呼び出されました')
self.name = name
class Cat(Animal):
pass
class Dog(Animal):
pass
neko = Cat('猫ちゃん')
print(neko.name)
inu = Dog('わんちゃん')
print(inu.name)
実行結果
Animalクラスのコンストラクタが呼び出されました
猫ちゃん
Animalクラスのコンストラクタが呼び出されました
わんちゃん
子クラスにはコンストラクタを定義していないため、初期化にはAnimal
クラスのコンストラクタが呼び出されました。このように、親クラスに定義されていて子クラスに定義されていないメソッドを子クラスのインスタンスから呼び出した場合、親クラスのメソッドが呼び出されます。
オーバーライド
オーバーライドとは、親クラスに定義されているメソッドと同じ名前のメソッドを子クラスで定義し、親クラスのメソッドを拡張・変更することを言います。
親クラスで定義されているメソッドと同名のメソッドを子クラスで定義します。
class 親:
def メソッド(self):
print('親のメソッド')
class 子(親):
# オーバーライド
def メソッド(self):
print('子のメソッド')
例としてオーバーロードを実装してみます。以下のコードでは、Animal
クラスで定義したメソッドを子クラスのDog
クラスでオーバーライドしています。Cat
クラスでは何もしていません :
class Animal:
# 親クラスのメソッド
def cry(self):
print('Animalのcryメソッド')
# オーバーライドしないクラス
class Cat(Animal):
pass
# オーバーライドするクラス
class Dog(Animal):
def cry(self):
print('ワンワン!')
neko = Cat()
neko.cry()
inu = Dog()
inu.cry()
実行結果
Animalのcryメソッド
ワンワン!
このように、親クラスに定義されているメソッドと同じ名前のメソッドを子クラスで定義することで、そのメソッドをオーバーライド(再定義)することができます。
- 引数が異なっていてもメソッド名が同じならオーバーライドされます
親クラスを参照する[super()]
子クラスからsuper()
を実行することで親クラスにアクセスすることができます。親クラスにアクセスすることでコンストラクタやメソッドなどを呼び出すことができます。
class 子(親):
def メソッド(self):
# 親にアクセス
super()
例として、子クラスのコンストラクタから親クラスのコンストラクタを呼び出してみます :
class 親:
def __init__(self, value):
print('親 コンストラクタ start')
self.value = value
print('親 コンストラクタ end')
class 子(親):
def __init__(self, value, data):
print('子 コンストラクタ start')
super().__init__(value) # 親クラスのコンストラクタ呼び出し
self.data = data
print('子 コンストラクタ end')
child = 子('value', 'data')
print(child.value)
print(child.data)
実行結果
子 コンストラクタ start
親 コンストラクタ start
親 コンストラクタ end
子 コンストラクタ end
value
data
super()
を通して親クラスのコンストラクタを呼び出すことで親クラスのコンストラクタを拡張することができます。もちろん、メソッドにも同様のことができます。
class 親:
def メソッド(self):
print('親 メソッド')
class 子(親):
def メソッド(self):
super().メソッド()
print('子 メソッド')
child = 子()
child.メソッド()
実行結果
親 メソッド
子 メソッド
このように、子クラスのメソッド内から親クラスのメソッドを呼び出すことで、親クラスのメソッドを子クラスで拡張することができます。
派生クラスの継承
派生クラスを継承して派生クラスを定義することも可能です。以下のコードは、D > C > B > Aクラス
に渡って継承しています。
class A:
def __init__(self, a):
print('A init')
self.a = a
def method(self):
print('A method')
print(f'a: {self.a}')
class B(A):
def __init__(self, a, b):
print('B init')
super().__init__(a)
self.b = b
def method(self):
print('B method')
print(f'a: {self.a}, b: {self.b}')
class C(B):
def __init__(self, a, b, c):
print('C init')
super().__init__(a, b)
self.c = c
def method(self):
print('C method')
print(f'a: {self.a}, b: {self.b}, c: {self.c}')
class D(C):
def __init__(self, a, b, c, d):
print('D init')
super().__init__(a, b, c)
self.d = d
def method(self):
print('D method')
print(f'a: {self.a}, b: {self.b}, c: {self.c}, d: {self.d}')
print('Aのインスタンス化')
a = A(1)
a.method()
print('Bのインスタンス化')
b = B(1, 2)
b.method()
print('Cのインスタンス化')
c = C(1, 2, 3)
c.method()
print('Dのインスタンス化')
d = D(1, 2, 3, 4)
d.method()
実行結果
Aのインスタンス化
A init
A method
a: 1
Bのインスタンス化
B init
A init
B method
a: 1, b: 2
Cのインスタンス化
C init
B init
A init
C method
a: 1, b: 2, c: 3
Dのインスタンス化
D init
C init
B init
A init
D method
a: 1, b: 2, c: 3, d: 4
上記コードでは、super()
で親クラスのコンストラクタを呼び出していましたが、さらに上の世代のクラスを参照することもできます。
例えば、DクラスからBクラスやAクラスを参照することができます。以下のコードでは、Dクラスのコンストラクタ内でBクラスを参照し、method
メソッドでAクラスを参照しています。
class D(C):
def __init__(self, a, b, d):
print('D init')
# Bクラスのコンストラクタの呼び出し
super(C, self).__init__(a, b)
self.d = d
def method(self):
# Aクラスのmethodの呼び出し
super(B, self).method()
print('Dのインスタンス化')
d = D(1, 2, 4)
d.method()
実行結果
Dのインスタンス化
D init
B init
A init
a: 1
継承するとメソッド順序解決でメソッドが呼び出される優先順位が決められます。 今回の場合は、単純な直列の継承なので子が優先され、D > C > B > Aクラス
という順序になります。そして、super
関数の第一引数に型を渡すことで、その型の直後から検索されるようになります。
コードを見てみると、コンストラクタで呼び出したsuper
関数には、Cクラスが渡されているのでB > Aクラス
という順序でメソッドが検索されています。method
メソッド内のsuper
関数では、Bクラスが渡されているのでAクラスのみが検索されています。
多重継承
1つのクラスに複数のクラスを継承させることができます。以下のコードは、A・Bという2つのクラスをCクラスに多重継承しています。
class A:
def __init__(self, a):
print('A init')
self.a = a
def method(self):
print(f'a: {self.a}')
class B:
def __init__(self, b):
print('B init')
self.b = b
def method(self):
print(f'b: {self.b}')
class C(A, B):
def __init__(self, a, b, c):
print('C init')
super().__init__(a)
self.c = c
def method(self):
print(f'a: {self.a}, c: {self.c}')
c = C(1, 2, 3)
c.method()
実行結果
C init
A init
a: 1, c: 3
上記コードでは、super()
でAクラスが参照されました。
検索順序が遅いクラスを参照する
先ほどのコードでは、Aクラスしか参照していなかったのでBクラスも参照してみます。
class C(A, B):
def __init__(self, a, b, c):
print('C init')
super().__init__(a)
# Bクラスの参照
super(A, self).__init__(b)
self.c = c
def method(self):
print(f'a: {self.a}, b: {self.b}, c: {self.c}')
c = C(1, 2, 3)
c.method()
実行結果
C init
A init
B init
a: 1, b: 2, c: 3
super
関数の第一引数にAクラスを指定することでBクラスを参照することができます。
また、継承させる順番を変えることで検索順序を変更することができます。()
内に記述された親クラスは左側ほど優先順位が高くなります。
# 継承させる順番をB > Aに変更
class C(B, A):
def __init__(self, a, b, c):
print('C init')
# Bクラスが参照されている
super().__init__(a)
# Aクラスが参照されている
super(B, self).__init__(b)
self.c = c
def method(self):
print(f'a: {self.a}, b: {self.b}, c: {self.c}')
c = C(1, 2, 3)
c.method()
実行結果
C init
B init
A init
a: 2, b: 1, c: 3
C > B > Aクラス
の順序で呼び出されるようになりました。
オーバーライドしていない場合の検索順序
メソッドをオーバーライドしていない場合、検索順序には親クラスのメソッドが評価されます。
class Zero:
def method(self):
print('Zero')
class A(Zero):
pass
class B(Zero):
pass
class C(Zero):
def method(self):
print('C')
class Tail(A, B, C):
pass
t = Tail()
t.method()
実行結果
C
検索順序的には、CクラスよりもA・Bクラスの方が早いですが、メソッドをオーバーライドしてないので、A・BクラスはZeroクラスのメソッドを参照しています。そのため、検索順序はC > Zero
となっています。
優先順序を取得する[mroメソッド]
mro
メソッドからメソッド順序解決リストを取得することができます。
クラス.mro()
例として、適当に継承を行ったクラスの検索順序を確認してみます :
class Zero:
pass
class A(Zero):
pass
class B(Zero):
pass
class Tail(A, B):
pass
print(Tail.mro())
実行結果
[<class '__main__.Tail'>, <class '__main__.A'>, <class '__main__.B'>, <class '__main__.Zero'>, <class 'object'>]
Tail > A > B > Zero
になっているのが確認できました。ちなみに、リストの最後に格納されているobject
クラスは、全てのクラスの基底クラスです。
特定のクラスを継承しているか判別する
isinstance()
関数を使うことで特定のクラスを継承しているか判別することができます。
isinstance(object, classinfo)
object
引数がclassinfo
引数のインスタンスか、またはサブクラスのインスタンスの場合にTrue
が返される
例として、任意のクラスを継承しているかisinstance()
関数を使って判別してみる :
class Parent:
def __init__(self):
self.value = 'parent'
# Parentを継承したクラス
class Child(Parent):
pass
# 継承していないクラス
class NoParent:
pass
# インスタンス化
c = Child()
n = NoParent()
def func(obj):
# クラス名の出力
print(obj.__class__)
if isinstance(obj, Parent):
print('Parentクラスを継承しています')
print(f'value: {obj.value}') # Parentが継承されていれば必ず定義されている
else:
print('Parentクラスを継承していません')
func(c)
func(n)
実行結果
<class '__main__.Child'>
Parentクラスを継承しています
value: parent
<class '__main__.NoParent'>
Parentクラスを継承していません
上記コードでは、Parent
クラスを継承しているか判定し、継承していた場合はParent
クラスの属性を呼び出しています。このように、特定の親クラスを継承しているかどうかを判別することで、そのクラスが親クラスで定義されている属性を呼び出せるかどうかを知ることができます。
継承の必要性
継承はとても便利な機能ですが、危険性も孕んでいます。継承を使うごとにソースコードの見通しがどんどん悪くなっていき、親クラスの責任と影響が不明確になってしまうのです。つまり、どこをいじったらどのような変化が起こるか分かりづらいコードになっていきます。
なので、最近では合成を使うことが推奨されています。
皆さんも継承の使い方には注意してください。
まとめ
この記事では、Pythonの継承について解説しました。
継承からのオーバーライドは覚えておきましょう。
def 親:
def メソッド名(self):
print('親メソッド')
def 子(親):
def メソッド名(self):
print('子メソッド')
それでは今回の内容はここまでです。ではまたどこかで〜( ・∀・)ノ